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親族相続法の私家版復習ノート
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pre 遺留分


資本制社会では、
自分の財産は自由に処分できるのが原則である。
よって、
被相続人が、自分の財産を
推定相続人以外の第三者に譲渡したり、あるいは、
特定の相続人に法定相続分以上の財産を与えたりすることは、
本来自由である。
また、
安全・確実な取引を望む資本制社会では、
自由に取引できる財産と自由に取引できない財産とが
区別されることは好ましくない。

しかしながら、
被相続人の財産は、
これに依存してきた一定範囲の近親者のための
生活の基礎という側面もある。
また、
財産の名義が被相続人個人のものであっても、
実際には、その財産を作り上げた陰には
近親者の力によることもありうる。

以上の様な、相対立する二つの考え方の妥協・調整の結果が、
遺留分制度である。


遺留分制度は、
生前の被相続人による財産処分によって、
相続人の相続すべき財産が減ることを防ごうとするものではあるが、
相続人の希望するままに、被相続人の生前処分を
取り止めとすることができるものではない。

相続人のために取り戻すことができるものは、
第1に、遺贈された財産(1033条)
第2に、一定範囲に限っての贈与された財産(1030条)
である。
被相続人が不当に安く売った財産も贈与に準ずる(1039条)。
  遺贈 → 贈与 の順
また、
相続人は、遺贈や贈与されたものの一定限度でしか
取り戻すことができない(1028条)。


遺留分制度は、
相続人のために一定限度の相続財産を留保して、
この財産を基礎に家族生活の安定を維持し、
また、この財産に対する家族の寄与を認めようとするものである。
したがって、
具体的な事例によっては、民法上、形式的には遺留分があるように見えても、
実質的に遺留分の制度趣旨を欠いている場合には、
遺留分減殺請求権の行使が認められない場合もある。
 ex. 仙台高秋田支判昭和36.9.25
   老齢の養親を捨てた養子と、
   その後の老親を扶養し助けた事実上の養子


いよいよ、最後の章ですね。ふぅ・・・。

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  第1028条 (遺留分の帰属及びその割合)

兄弟姉妹以外の相続人は、
遺留分として、
次の各号に掲げる区分に応じて
それぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1 直系尊属のみが相続人である場合
     被相続人の財産の3分の1
2 前号に掲げる場合以外の場合
     被相続人の財産の2分の1


・ 遺留分権利者は、
 被相続人の
 直系尊属・直系卑属・配偶者 のみ。
 被相続人の兄弟姉妹には遺留分は無い。

  よって、兄弟姉妹以外に相続人がいない場合には、
 被相続人は、
 全財産を誰に贈与しようと遺贈しようと自由である。

・ 相続人でなければ、遺留分は問題にならないから、
 相続欠格者、相続を排除された者、相続を放棄した者には、
 遺留分は無い。

・ 相続人が直系尊属のみの場合、
 遺留分は、相続財産の3分の1。
 父母ともに健在の場合は、これを平等に配分し、
 それぞれ6分の1ずつ。
 
 それ以外は、相続財産の2分の1を、
 各法定相続分によって配分する。


・ 相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合の遺留分は、
 兄弟姉妹には遺留分が無いので、
 配偶者のみが2分の1の遺留分を有する。

  第1029条 (遺留分の算定)

① 遺留分は、
 被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に
 その贈与した財産の価額を加えた額から
 債務の全額を控除して、
 これを算定する。

② 条件付きの権利又は
 存続期間の不確定な権利は、
 家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、
 その価格を定める。


・ 「遺留分の算定の基礎となる財産」=
 「相続開始当時の被相続人の財産」+「贈与された財産」
  -「債務」
 (※ 遺贈された財産は、相続開始当時の財産に含める)

・ 財産評価の基準時は、
 贈与時ではなく、相続開始時であるから(1044条、904条)、
 贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算する。

・ 相続財産に加算すべき贈与の範囲や
 相続人中の特別受益については、
 1030条、1044条、903条による。

  第1030条 (遺留分の算定・その2)

贈与は、
相続開始前の一年間にしたものに限り、
前条の規定により
その価額を算入する。
当事者双方が
遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、
一年前の日より前にしたものについても、
同様とする。


・ 「損害を加える可能性を知っていたこと」=悪意
 悪意の認定は、
 贈与の時期・被相続人の蓄財能力などによって結果を異にする。
 
 悪意の立証責任は、遺留分を主張し
 減殺請求権を行使する側にある。

・ 特別受益者(903条)の受けた利益は、
 被相続人が相続の前渡しの意味で贈与するものであり、
 遺留分計算の場合にも、相続分算定の方法に準じて、
 贈与の時期や当事者の善意・悪意を問わず、
 遺留分算定の基礎たる財産の中に算入する。

  第1031条 (遺贈又は贈与の減殺請求)

遺留分権利者及びその承継人は、
遺留分を保全するのに必要な限度で、
遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を
請求することができる。


・ 遺留分を有する相続人が、
 その相続した財産額では遺留分の額に足りないとき、
 遺留分の額に達するまで、
 遺贈、及び贈与の効力を否認して、
 財産を取り戻すことを遺留分の減殺という。

・ 遺留分権利者たる相続人の債権者や、
 被相続人の債権者は、
 相続人の有する遺留分減殺請求権を相続人に代位して行使し、
 財産を取り戻したうえでこれを差し押さえることが認められている。
 (425条)

・ 受遺者又は受贈者には、
 現物を返還するか、あるいはその価額を弁償して
 現物の返還を免れるかの選択権がある(1041条)。

  第1032条 (条件付権利等の贈与又は遺贈の一部の減殺)

条件付きの権利又は
存続期間の不確定な権利を贈与又は
遺贈の目的とした場合において、
その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、
遺留分権利者は、
第1029条第2項の規定により定めた価格に従い、
直ちにその残部の価額を
受贈者又は受遺者に
給付しなければならない。


・ 条件付き権利または存続期間の不確定な権利が
 贈与または遺贈された場合で、
 それが減殺の対象になった場合には、
 条件の成就や存続期間の確定を待たずに
 鑑定人によりその評価を決め(1029条2項)、
 その価額から減殺の対象となる価額を差し引いた金額を、
 受遺者・受贈者に支払わなければならない。

  第1033条 (贈与と遺贈の減殺の順序)

贈与は、
遺贈を減殺した後でなければ、
減殺することができない。


・ 遺留分減殺の順序は、新しいものから古いものへ。

・ 100万円の贈与と50万円の遺贈があり、
 70万円の遺留分が侵害されいる場合、

  まず、遺贈を減殺する。
  そして、残りの20万円についてのみ、
  贈与につき減殺する。

  したがって、受贈者はなお、80万円を確保する。

  第1034条 (遺贈の減殺の割合)

遺贈は、
その目的の価額の割合に応じて
減殺する。
ただし、
遺言者が
その遺言に別段の意思を表示したときは、
その意思に従う。


・ 複数の遺贈がある場合の減殺の方法。
・ 遺贈がいくつなされていても、
 遺贈は時間的に先後の区別が無いから、
 遺留分侵害額をそれぞれの遺贈の額に比例して
 全ての遺贈に割り当てた価額を減殺する。

ex.被相続人が、Aに1000万円の遺贈
 Bに3000万円の遺贈、Cに4000万円の遺贈をしており、
 相続人の遺留分侵害額が4000万円とすれば、
 Aから500万、Bから1500万、Cから2000万を
 減殺する。

 第1035条 (贈与減殺の順序)

贈与の減殺は、
後の贈与から順次前の贈与に対してする。


・ 複数の贈与がある場合、
 新しい贈与から減殺され、それでも不足する場合に、
 古い贈与へと、順次減殺される。

・ 被相続人は、贈与の減殺の順序について、
 この順序と異なった順序を指定することは出来ない。

・ 同日に贈与がなされた場合、
 按分比例による減殺による?だろう。
 (大判昭9.9.15) 

 第1036条 (受贈者による果実の返還)

受贈者は、その返還すべき財産のほか、
減殺の請求があった日以後の果実を
返還しなければならない。


・ 果実・・・
 贈与を受けた不動産を賃貸として使用する場合の家賃。
 居住用として利用する場合の家賃相当額。
 預金の利息。など。

・ 減殺請求が確定する前、過去には、
 遡らない。



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