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親族相続法の私家版復習ノート
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第6章 相続人の不存在

  第951条 (相続財産法人の設立)

相続人のあることが明らかでないときは、
相続財産は、
法人とする。


・ 相続財産を法人とすることで、
 被相続人の債権者(相続債権者)や受遺者は、
 権利を行使する相手ができる。

・ 一人でも相続人が現に存在すれば、
 本条は当てはまらない。

・ 相続人はあるが、生死や居所が不明な場合には、
 失踪宣告の制度(30~32条)。


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  第952条 (相続財産の管理人の選任)

① 前条の場合には、
 家庭裁判所は、
 利害関係人又は検察官の請求によって、
 相続財産の管理人を
 選任しなければならない。

② 前項の規定により相続財産の管理人を選任した時は、
 家庭裁判所は、
 遅滞なくこれを公告しなければならない。


・ 利害関係人とは、
 相続債権者や受遺者、
 相続財産を担保にとっていた人、
 特別縁故者(958条の3)など。

・ 審判によって管理人が選任される(家事審判法→家事事件手続法)

・ 相続人のいない相続財産があることと、
 その相続財産について権利や義務をもつ者に
 誰に対して権利の行使や義務の履行をすればよいかを知らせ、
 それと同時に
 相続人を探索するための公告。


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  第953条 (不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

第27条から第29条までの規定は、
前条第1項の相続財産の管理人
(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について
準用する。


・ 相続財産管理人は、
 相続財産を保存するために必要な行為と
 相続財産をその性質を変えない程度で、
 利用・改良するための行為以外は、
 家庭裁判所の許可が必要となる。 

・ 第27条(管理人の職務)
・ 第28条(管理人の権限)
・ 第29条(管理人の担保提供及び報酬)


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  第954条 (相続財産の管理人の報告)

相続財産の管理人は、
相続債権者又は受遺者の請求があるときは、
その請求をした者に
相続財産の状況を報告しなければならない。


・ 相続財産は、
 現れるかもしれない相続人のために管理されるだけでなく、
 相続債権者や受遺者のためにも管理されているため。

  第955条 (相続財産法人の不成立)

相続人のあることが明らかになったときは、
第951条の法人は、
成立しなかったものとみなす。
ただし、
相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を
妨げない。


・ 相続財産管理人が選任された場合であっても、
 958条の申出期間が経過するまでに相続人が現れ、
 相続の承認をすれば、
 相続財産法人は、相続開始の時にさかのぼって
 成立されなかったものとされる。
 ただし、
 953条に定められた権限の範囲内でなされた
 相続財産管理人の行為は
 効力を失わない。


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  第956条 (相続財産管理人の代理権の消滅)

① 相続財産の管理人の代理権は、
 相続人が
 相続の承認をした時に消滅する。

② 前項の場合には、
 相続財産の管理人は、
 遅滞なく相続人に対して
 管理の計算をしなければならない。


・ 相続財産管理人は、
 相続財産という法人の代表者である。
・ 法人がなくなれば、それまでは、
 相続人のための法定代理人であったことになる。
・ 現れた相続人が相続放棄をしてしまうと
 法律関係、手続きが複雑になるため、
 相続の承認をするまで代理権を存続させる。

  第957条 (相続債権者及び受遺者に対する弁済)

① 第952条第2項の公告があった後二箇月以内に
 相続人のあることが明らかにならなかったときは、
 相続財産の管理人は、遅滞なく、
 すべての相続債権者及び受遺者に対し、
 一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を
 公告しなければならない。
 この場合において、
 その期間は、二箇月を下ることができない。

② 第927条第2項から第4項まで及び
 第928条から第935条まで
 (第932条ただし書を除く。)の規定は、
 前項の場合について準用する。


・ 952条にある相続財産管理人が選任されたという
 第1回目の公告がなされてから2箇月の間に
 相続人が現れなければ、
 清算の手続きが始まる。

・ 清算の手続きは概ね限定承認が行われた場合の
 規定が準用される。
927条 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告
928条 公告期間満了前の弁済の拒絶
929条 公告期間満了後の弁済
930条 期限前の債務等の弁済
931条 受遺者に対する弁済
932条 弁済のための相続財産の換価
933条 相続債権者及び受遺者の換価手続きへの参加
934条 不当な弁済をした限定承認者の責任等
935条 公告期間内に申し出をしなかった相続債権者及び受遺者

  第958条 (相続人の捜索の公告)

前条第1項の期間の満了後、
なお相続人のあることが明らかでないときは、
家庭裁判所は、
相続財産の管理人又は検察官の請求によって、
相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を
公告しなければならない。
この場合において、
その期間は、六箇月を下ることができない。


・ 3回目の公告。
 1回目(952)、2回目(957)の公告にもかかわらず、
 相続人が現れない場合の規定。
・ 相続財産を清算し、なお余った財産がある場合に
 特別縁故者に分与するか、国庫に帰属させるか等を
 判断するためのもの。

  第958条の2 (権利を主張する者がいない場合)

前条の期間内に
相続人としての権利を主張する者がないときは、
相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、
その権利を行使することができない。


・ 3回にわたる公告によっても相続人が名乗り出ない場合、
 その期間の終了後に相続人が名乗り出たとしても、
 相続人として、相続財産に対する権利を行使できなくなる。
・ 同じように、相続債権者、受遺者についても、
 その期間の終了までに管理人に確認されなかった者は、
 以後、相続財産から支払えと要求できなくなる。


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  第958条の3 (特別縁故者に対する相続財産の分与)

① 前条の場合において、
 相当と認めるときは、
 家庭裁判所は、
 被相続人と生計を同じくしていた者、
 被相続人の療養看護に努めた者その他
 被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、
 これらの者に、
 清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を
 与えることができる。

② 前項の請求は、
 第958条の期間の満了後
 三箇月以内にしなければならない。


・ 普通の親族としての扶け合いをしたにすぎない程度では、
 ここでいう特別の縁故者とはならない。
・ 特別縁故者への財産分与は、
 当然の権利として与えられているものではなく、
 家庭裁判所の判断による恩恵的なものである。

・ 内縁の妻や事実上の養子であっても、
 相続人が一人も現れなかったとしても、
 原則として、相続財産をもらうことはできない。

 やはり遺言を書いておくべき。



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